発熱外来について

当院の発熱外来は、受診歴の有無に関わらず、発熱その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者の受入れを行っております。また、受入れを行うために必要な感染防止対策として、発熱患者様の動線を分ける対応を行っております。

インフルエンザ抗原検査や新型コロナウイルス抗原検査に加え、溶連菌やアデノウイルスなど、地域で流行している感染症に対しても検査を行うことが可能です。

※次の方々は発熱外来で診察を行うため、ぜひWeb予約をご利用ください。飛び込みで当日診察を希望される場合は、混雑状況によっては院外でお待ちいただく場合がございます。

  • 発熱のある方
  • インフルエンザやコロナなどの抗原検査を希望される方
  • 周囲に上記のような流行性の疾病の罹患者がいる方

インフルエンザ

インフルエンザウイルスと接触し、通常は1~3日間の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱や筋肉痛、関節痛、倦怠感など、全身性の症状が出現します。いわゆる普通の「かぜ」と比べると重い症状が特徴の気道感染症です。
インフルエンザは通常は1週間程度症状が持続した後に寛解しますが、インフルエンザの重症化と言って、脳症や肺炎を合併することがあります。脳症は特に5歳以下の小さなお子さまが起こしやすい合併症で、30%が死亡し25%に後遺症が残るとされる重篤な状態です。肺炎は免疫機能の低下した高齢者で多くみられます。毎年接種が行われているインフルエンザワクチンは、ウイルスの感染予防効果は高くはありませんが、高齢者の肺炎を約50%、小児の脳症を約60%抑制しているとのデータが出ており、重症化に対しては高い予防効果が示されています。
インフルエンザで使用される迅速抗原検査は、鼻から綿棒を入れることでウイルスの有無を評価します。発症から間もないタイミングで検査を行うと、体内のウイルス量がまだ十分に増幅しておらず、誤って陰性と表示される(偽陰性)の可能性があります。そのため、発症からおよそ半日程度経過してからの検査を受けられることをおすすめしています。
インフルエンザと診断されたタイミングが発症から48時間以内であれば、インフルエンザ治療薬を使用することで、通常1週間続く症状がおよそ1日程度短縮する効果が示されています。48時間を超えたケースでも一定の効果が得られることが期待できます。特に5歳以下のお子さまや高齢者など、重症化のリスクが高い患者さまでは積極的に薬剤を使用することが推奨されています。最も良く使用される治療薬はタミフルです。2000年代にタミフルを服用した年少の患者さまで、窓から飛び降りるなどの異常行動が生じたと報告されましたが、現在はタミフルとの直接的な関連性は証明されておらず、小さいお子さまでも使用することが可能となっています。5歳以上の方であれば、一回の吸引で治療を行うイナビルを使用することもできます。2018年に開発された新しい治療薬であるゾフルーザは、従来の治療薬とは異なる作用経路を持ち、ウイルス量を従来薬よりも早期に減少させるとして注目を集めた薬剤でした。しかし、ゾフルーザを使用中の患者さまの体内から、ゾフルーザが効かない変異ウイルスが検出されたため、日本感染症学会からは慎重な判断を行うよう提言がなされていました。執筆を行っている2024年4月時点では、12歳以上の小児と成人に対して、ゾフルーザは従来の治療薬と同などの推奨度となっています。一方、12歳未満の小児では、ゾフルーザを投与することで高率に変異ウイルスが出現するだけでなく、実際に症状の改善が遅れ、ウイルスがより長期に渡って排出されることが確認されており、使用は推奨されていません。当院ではタミフルやイナビルを中心に治療し、成人に対しては一部ゾフルーザの使用を検討しています。今後も学会からの提言や動向に注意して、より良い診療が提供できるよう努力してまいります。
インフルエンザにかかった場合は、学校保健安全法という法律に基づいて所定の期間が登校停止となります。具体的にはいずれも発症日を0日と数えて、以下の期間が登校停止となります。

  • 小学生以上:発症後5日間が経過し、かつ解熱後2日間が経過するまで
  • 未就学児:発症後5日間が経過し、かつ解熱後3日間が経過するまで

成人の場合は、特に法律的に出勤停止の期間は決まっておりませんので、勤務先にご確認ください。 診断書の提出が必要な場合は作成いたします。

新型コロナウイルス感染症

コロナウイルスと接触し、通常は2~3日間の潜伏期間を経て、発熱や咽頭痛、鼻汁、筋肉痛、倦怠感など、インフルエンザに類似した全身性の症状が出現します。2021年末にオミクロン株にウイルスが置き換わってからは重症化するケースは減少し、しばしば咽頭痛から症状がはじまります。
新型コロナウイルス感染症は、通常は1週間程度症状が持続したのちに寛解しますが、発症から3か月が経過した時点で何らかの症状が2か月以上続き、他の疾患による可能性が否定される場合は、「コロナ後遺症」の疑いがあります。「コロナ後遺症」では、疲労感や倦怠感、息切れ、咳、集中力・思考力の低下、睡眠障害など様々な症状が確認されていますが、個人差が大きく医学的にわかっていないことが多い状態です。
新型コロナウイルス感染症では、鼻から綿棒を入れてウイルスの有無を評価する迅速抗原検査や、唾液を使ったPCR検査を用いて診断を行います。当院では迅速抗原検査は当日中に結果が出ますが、PCR検査は外部へ委託しており、結果が判明するまで数日を要します。
新型コロナウイルス感染症では、体内の酸素濃度(SpO2)の値によって重症度が決まります。また、重症化を起こしやすい危険因子(重症化リスク)が発見されています。この重症度と重症化リスクによって治療方針が決まります。まず、重症度が軽症や中等症Ⅰの場合は、外来診療を行うことが可能です。年齢や基礎疾患、ワクチンの接種状況、症状などによって重症化リスクを評価し、後述する新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の導入を検討します。酸素吸入を要する中等症Ⅱ以上では全身状態に応じて入院加療が必要になります。
外来診療で主に使用する新型コロナウイルス感染症の治療薬は次の3つです。1つ目はパキロビットで、現存する治療薬の中で重症化の抑制効果が最も高く、発症から5日以内に服用することで入院期間の延長や死亡など、重症化リスクを89%下げることが示されています。欠点として、飲み合わせが悪い薬剤が非常に多く、服用できるかどうかチェックが必要です。腎臓の機能が低下している場合は、その程度によって服用することができません。2つ目はラゲブリオです。最初に開発された内服の治療薬で、パキロビットと比べると飲み合わせを気にしなければならない薬はなく、腎臓の機能が落ちている方に対しても使用することがメリットです。一方、肝心の重症化リスクを下げる効果が30%とパキロビットと比較して低い点が欠点です。そのため推奨度はパキロビットと比較して、低い位置づけになっています。3つ目はゾコーバです。前述の2つの薬剤とは異なり、重症化リスクを下げる効果は証明されていませんが、発症から3日以内に服用することで症状の持続期間が1日程度短縮できることがわかっています。対象となるのは軽症で重症化リスクのない若年者で、高熱や強い咳・咽頭痛がみられる方です。欠点として、パキロビットと同様に飲み合わせが悪い薬剤が多い点です。また、内服が勧められる重症化リスクのない若年者はそもそも自然に軽快することがほとんどのため、使い所が難しい薬とも言えます。確実に体内のウイルス量は減少させるため、それによってコロナ後遺症のリスクを下げる可能性も示唆されていますが、判断するにはまだデータが不足しています。
いずれの治療薬も2024年度より公費負担がなくなりました。3割負担の方でパキロビットとラゲブリオは約3万円弱、ゾコーバは約1万5千円の自己負担が生じます。
2024年度からは65歳以上の高齢者、および60~64歳で基礎疾患を有する方(インフルエンザワクチンと同じ)に対して、新型コロナウイルスワクチンの定期接種が開始となりましたので、該当される方は予防接種のページをぜひご覧ください。